製糸界隈のものがたり(岡谷市)

2018.02.25 / 地域を知る / 編集部さん

日本の近代を語るにも、諏訪の近代を語るにも、ゼッタイ外せないのは生糸。
そう、絹糸。
絹糸といえば、おかいこさま。
蚕、カイコガです。

どの村にも、道祖神や鎮守さまの傍らには「蠺玉(こたま)さま」。
※「蠶」は「蚕」の旧字体
小さな祠を作るところもあれば、石碑にするところも。
DSC_0336
下諏訪町の某蚕玉さまの祠の彫刻のモチーフに桑の葉と繭。
こんな風に祀られることもあります。

おかいこさまはそれはそれは大事に扱われました。
家の中でも最も環境のいい、風通しの良い場所で育てられていました。
蚕に悪さをはたらくネズミを除けるためにに猫を飼い、その猫の供養に「愛猫権現」としてまつる地区もあります。
DSC_2853
(岡谷市川岸地区。見やすいように画像を加工しています。)

岡谷市は古くなった蚕糸博物館を移転新築。
「シルクファクト」と愛称をつけて、製糸場を併設。
生糸をとる場面を来館者が観察できる動体展示を取り入れました。
そして太っ腹にも、撮影OK!
(ただし、館内のルールに従ってください)
岡谷市の発展と絡めながら、製糸業をテーマに展示をしています。

例えば糸取りのシステム。
当時、イタリア式が先行して御山田製糸場(現在の諏訪市岡村)に導入。
効率よく糸を縒るのに優れていました
その後、糸を繰ると繭の煮るの作業がひとりでできる仕組みのフランス式が諏訪にも入ってきます。
そこで、さすがの諏訪人。
双方のいいところを組み合わせ、日本人の体格に合わせ、糸取りの作業に使うシステムを小型化。
材料も木や竹簡と使うなど、自家調達。
DSC_5051 DSC_5050
諏訪式というシステムを生み出しました。
この諏訪式は、生糸の生産効率をぐぐっと押し上げていきます。

そんな生産の様子が併設の宮坂製糸場で見られます。
DSC_5048
…いやいや、お姉さまたちの手の早いこと早いこと…。
どう糸を繰っているのか観察しても、どうにも見極められません。

奥の竹の行李にはこれから煮る繭が、小さい白い鍋には熱湯で煮ている繭があります。
半月形の鍋でお姉さんたちが糸を繰ります。

そういえばこの糸取りに使う鍋。
過去にご紹介したスクラッチタイルを作っている窯と同じところで生産されていたのです。
糸取り鍋を作っていたのは高遠の丸千組。
かつて高遠焼の窯でしたが、生糸の生産量の増加に伴い糸とり鍋や建築資材をつくることもしていたのです。
糸取り鍋も作りつつ、片倉館や旧岡谷市庁舎の外壁材のスクラッチタイルも生産していました。

生糸でつながるスクラッチタイルと糸取り鍋。
かたちは違っても同じ故郷を持つ兄弟だったのですねえ。

そんな糸取り鍋のコレクションが、現在岡谷蚕糸博物館で展示中です。
思わぬ形には理由がある!
糸取りの姉さまたちの素早い手さばきと共に、ぜひご覧くださいな。
1414e6aeeb08543ef1af8c2204e362e2

【岡谷蚕糸博物館(シルクファクトおかや)】
☆開館時間
AM9:00~PM5:00
動態展示・まゆちゃん工房は9:00~12:00、13:00~16:00
※時間は変更することがございます。
☆休館日
毎週水曜日(その日が祝日の場合は開館)
祝日の翌日、12月29日~1月3日 ※その他臨時休館日あり
☆入館料
大人 500円
中高生 300円
小学生 150円
※岡谷美術考古館、イルフ動画館などの共通入館券もあります。
単独で購入するよりオトクです♪
(ふり)

この記事につけられたタグ

|