草原で。 (諏訪市・茅野市・下諏訪町)

2017.08.16 / 地域を知る / 編集部さん

「お盆過ぎればもう寒くなるで」と、諏訪地域ではよく言われています。
諏訪湖の花火大会が終わったとたん、季節もヒトも夏終了ムード。
朝晩も「涼しい」から「なんだかはだ寒い」とかに変わったりします。

高原は一足お先に季節が進みます。
こちらは八島ヶ原湿原。
湿原をぐるりと回るように木道が敷設されていて、スニーカーでも散策が楽しめます。
急いで1時間、でもゆっくり景色や草花、虫たちを眺めてほしいなあとおもうので…

ぜひ2時間くらいかけてゆっくり、をオススメします。
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観光のお客さんもひと段落。
静かな湿原歩きは本当に異界にいるようで心地のいいものです。

夏の中ほどから霜が降りるまで咲き続ける、こんな花も目立つようになります。
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マツムシソウ。
薄紫色の花は誰もが知る高原の植物のひとつ。
草原地域を代表するような植物です。

八島ヶ原湿原を含む霧ヶ峰一帯が草原の広がる地域であるのには理由があります。

かつての火山活動でできたなだらかな地形に次第に植物がやってきます。
貧栄養の火山性の土壌の上に植物たちがやってきますが、標高が高く西風が吹き付けるシビアな気候条件により草原の状態が続きました。
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その植生を利用して狩猟地になったり、カヤを刈る場所になっていたりしたようです。
そして、全国に比べやや遅れはしたものの稲作も始まりました。
とくに江戸時代に入ってからは新田開発が起こり、農耕に使う牛馬の餌や肥料とする草を採取する場所として需要が高まり、実は昭和30年代まで草原の状態を維持していたのです。

そうしてできた草原は昭和30年ころまで日本の国土の1割を占めていたとされます。

やがて化石燃料(灯油とかガソリン)、農機具の普及により、草原の草は農耕に利用されなくなります。
ここから半世紀。
日本国内の草原は、急激に減少を続けて、現在は国土の1%未満であるといわれています。

そうした貴重な草原に生きるものの代表格がマツムシソウ。
発芽してから開花まで約1年半。
長いものでは2年以上かかります。

発芽して最初の1年は葉を広げ、根を張り、栄養分を蓄えます。
タンポポの葉のように地面に葉を広げるロゼッタという形になります。
2年目。
栄養条件が整えば、中心から長い茎を上げて、その先に花をつけます。
そう、花を高く掲げるのは虫に受粉を助けてもらってタネをつくるため。

葉に陽があたることは彼らにとって非常に重要なことなのです。
運悪く、1年目に栄養を蓄えられなくても、何年かは待つことができるようです。

ですから、周囲を背の高い草木に囲まれてしまうと非常にピンチ!なのです。

同じような生活スタイルをもつのはこちら。
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ちょっと変わった形の花でしょ?
コウリンカと言います。

この花も背の高い草木の中ではなかなか暮らしにくい種類です。

草原の減少とともに見られる場所が全国各地で減少しています。
長野県においてもレッドデータブックにおいて留意種、環境省では絶滅危惧種Ⅱ類に指定しています。

もちろん、そうした植物を食草とする昆虫もたくさんいます。
草原でよく見かけるこのチョウも本州では標高の高い草原に多く暮らす生き物です。
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クジャクチョウ。
きれいなぐりぐり模様の色が美しいですねえ。
※日本産亜種には、あでやかな和服に例えて「geisya」と学名に付きます。

草原環境は今やノアの方舟のような貴重な存在になってしまいましたが、霧ヶ峰は里から車で30分ほど。
そんな場所が近くにあるところで暮らす幸せをじいいんと感じるのでした。
(ふり)

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