御柱祭異聞 (下伊那郡松川町)

2016.03.28 / 地域を知る / 編集部さん

諏訪地方は今月上旬に控えた山出しの準備で沸き返っています。

実は諏訪以外にも御柱祭を行う地域はたくさんあって、それは本家本元を自負する諏訪の人でもびっくりするほどの盛り上がりで盛大に執り行っている地域もあります。
様子を見聞きするにつけ、御柱祭の基本は諏訪にあったとしても、その土地の独特なアレンジがなされているような気配があったり、諏訪でやっていることを組み入れたり省略したような気配があったりと、眼が回るほどバリエーション豊富です。

このたび、諏訪盆地から自動車で南下すること約60km。
下伊那郡松川町の御射山(みさやま)神社を訪問。
この神社も諏訪大社と同年に御柱祭を行います。

境内には見事なシダレザクラ。
4月1日・2日の里曳きには開花が始まっていそうです。
御射山神社は正式には「御射山諏訪七里神社」といい、周辺の7つの地区の奉仕により祭事を執り行います。

段丘上に設けられた中世の城「船山城」の城跡の一角に鎮座し、ご祭神は「建御名方命」であるようす。

御柱祭は諏訪大社より一足早く、3月のうちに山出しを、そして4月初めに里曳きです。
拝殿前の庭に…4つの大穴。

…そう、この神社の御柱は神社の建物を取り囲むように建てるのではなく、拝殿前の庭の四隅に御柱を建てるのです。

画像左奥が拝殿、その右に三の柱用、そして画像左端が一の柱用の穴。
諏訪からやってきた身としては、この時点で目をぱちくりです。
さらにこの神社の御柱祭には諏訪にはない、そして他にもない(たぶん)大きな特徴がありました。

御射山神社から自動車で数分、里曳きを待つ御柱が安置されている場所に来ました。

太い立派な柱です。
御射山社の御柱は「前回よりも2寸ずつ長く」するのが習わしで、今年が50回目。
太さのわりにちょっとずんぐりな感じがするのはこの習わしのせいかもしれません。
…と、隣に見慣れぬものが。

ええええーっ!
これはたぶん曳き綱でしょうけど…ヘビの形。
二股に分かれた舌がついて、明らかにヘビ!

そう、御射山社の大きな特徴は曳き綱に取り付けられるヘビの頭。
綱と共に作成するのは七里のひとつ、上片桐区の人たちのみ。
ヘビの頭は柱の先端近くにつけられて、柱と共に氏子たちに曳かれます。(結構な扱いで、時には柱の下敷きにもなったりして…。)

口の中が真っ赤に彩色されて、一瞬ぎょっとするかもしれませんが、愛嬌のあるかわいい顔をしています。
残念ながら上社山出しとの日程が重なるため、こちらの神社の里曳きを見に行くことができませんが、前回の御柱祭を記録したこんな動画YouTube上にがありました。

※音声が出ます。
御射山諏訪七里神社御柱祭上片桐一之柱

山出しの大胆な木落の様子や木遣りの独特な節回し、だけど諏訪の御柱祭と似た部分を持ち合わせる御柱祭。
既視感を感じつつ、新鮮な、何より氏子の皆さんがいきいき和気あいあいな様子がして、なんだかアットホームなお祭りに思えます。
伊那谷の人のもつおおらかさがよく表れている気がします。

そうそう、実は拝殿の向かいに舞屋があるのですが、ここで思わぬ出会いが。

この御射山神社は一~四の柱のほかに、祭り終了後に境内の中だけで曳く小さな「五の柱」があるのです。
これはきっと、たぶん、「五の柱」用のヘビ


ちっちゃなヘビのかわいらしさにきゅんとするのでした。

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