綱縒り (諏訪郡原村)

2016.03.21 / 地域を知る / 編集部さん

今年の御柱祭の準備はどの地区もクライマックス。
特に上社の御柱は、自分たちの地区がどの柱を担当するのか決まらないと準備に取り掛かれません。
自分たちがどの柱を担当するのか決まるのは2月中旬の抽籤式。
そして、自分たちの担当する柱の大きさに合わせて、綱の太さ、メドデコの位置やサイズなどを決めていくのです。

この日、お邪魔した原村は「本宮四」の柱を担当します。
本宮前宮の2社8本の柱のうちでは小さい方なのだけど、御用材になるからには立派な木なのです。
そしてこの本宮四の柱を曳くための綱を作る場にやってきました。

会場は早春の肌寒さもなんのそのな熱気むんむん。
…そして、大量のフジのつる…。

原村をはじめとするいくつかの地区では、ワラで曳き綱を打つのではなく、フジを、しかも根フジ(土の中に埋まっている部分)を使います。
中にはワラの綱に一緒に縒り込んだりするところもありますが、原村は根フジオンリー。
若い衆の出払いで集める地区もあれば、各戸に割り当てて集める地区もあります。

あつめた根フジは乾燥すると強度が失われるので、綱を作る日まで自宅の池や近くの沢に浸けておきます。
自分の家に池がある、というのが前提なことも、農家の多い原村の特徴を表しているという感じもします。

根フジは束ねられて、継ぎ足されながら綱にします。
「綱打ち」ではなくて「綱縒り」と呼ぶのも独特。


縒る方法もこれまでみた綱打ちの景色とはだいぶ異なります。
会場にカラマツの木でやぐらを組んで、中央に「みつまた」と呼ばれる道具をセット。


「ヨイサ、ヨイサ」の掛け声とともに、息を合わせて縒りをかけていきます。

ワラがいくらでも手に入る現代でもなん子こんなに苦労して根フジを使うのかしらん、とつらつら思うのは、それは単に伝統とだけでなく、自分たちの曳く柱への畏敬の念と、強い丈夫な綱をつくりたい原村の皆さんのこだわりと、そしてもしかしたら、まだ諏訪地方に稲作が伝わるずっとずっと昔、こんな風にして生活に必要な綱を作った名残、そう、それは諏訪の民の暮らしの古態だったりするのではないかと想像するのです。

御柱祭に対する地区の個性として残されている昔からの古いスタイルを集めたら、もしかして御柱祭の古態が垣間見えるとしたら…これってなんだかドキドキ…と勝手な想像を巡らせるのでした。

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