御柱の綱打ち (下諏訪町御田町)

2016.02.29 / 地域を知る / 編集部さん

2016年2月28日、まるで3月下旬のようなぽかぽか陽気に恵まれました。
この日は諏訪盆地をはじめ県内外、御柱祭をやる まちでは「綱打ち」があちこちで行われていたようです。

下諏訪町だけでも7カ所。
綱は長さが必要なので、地区内の一部の道を通行止めにして、地区の住人総出で打ちます。
まさに「同時多発綱打ちデー」
ちなみに綱を「編む」のではなくて「打つ」のです。

下諏訪町内の御田町(みたまち)は明治に入ってからできた比較的新しい町。
もちろん、この町も綱打ちです。

朝早く近隣のまちをハシゴするように、神職さんと区長さんは大忙し。
まずは作業の安全を祈って、綱打ち前の神事が執り行われます。

サテ。

御田町はお隣の立町(たつまち) から道具を借りて綱を打っています。(立町の綱打ちは一足早く前週に完了。)
綱打ちに必須の「クルマ」が運ばれてきました。

地区によっては「車輪」、特に大きな太い綱を打つ時に使うものは「大車輪」と呼ばれます。
大八車の車輪のような木製のものを使う地区もあります 。

今日、御田町が作るのは、地区の小宮「津島社」の御柱の曳き綱1本。
それから大社用に元綱の後方へつなげる○番綱といわれるものを2本。
今回登場の「クルマ」は比較的小さ目。
でもこれがないと綱は打てない、大事な道具です。

前回は思わぬアクシデントと悪天候で夕方6:00過ぎまでかかって大変だったそうで、
役員の皆さんは「やぃ、明るいうちに終わらせるじゃぁ」と 気合入ってます。

まずは「びしっ」と、綱の長さを測ります。
指定された長さに打てるように、長さはとっても大事です。
あらかじめ道路につけたしるしに合わせて、綱の長さを計測します

この綱というか縄すら、藁から作る(縄をなう、と言います)地区もあったり、なんと藤の根を取ってきてそれで綱を打つという地区もあります。
綱打ちひとつとっても、個性豊かです。

そして、今回画期的なのはこのお道具!

 キレイな綱を打つために、縄が交差していたりヘンな縒りがかかっていると強度に問題が出たり、仕上がりが見苦しくなったりします。
たるみも取り除きながら縄を整えるこの作業は結構時間のかかる厄介な作業でしたが、立町の開発したコレで梳くと…
あら。
カンタン!
キレイ!
そして早い!


綱を打つのには下準備がとても大事なのです。
道具をきちんとそろえておくこと。
長さをきちんとはかること。
一本一本の縄がよじれたりたわんでいたりしないこと。
携わる者がみな、丁寧に息を合わせて作業をすること。

さ、これでやっと縒ることができるのです。

まずは3束に分けた縄の真ん中付近をひとまとめにして「へびぐち」という部分を作ります。

この「へびぐち」は他の綱と連結するための非常に重要な部分。
簡単に言うとふたつ折にした綱の輪の部分に相当します。
見た目のキレイさもさながら、何より強度が求められます。
役員さんたちが慎重に縒りをかけながら、そして年配者が指導しながら、きっちりと打っていきます。

へびぐち 、完成です。

この部分をクルマに取り付けて、いよいよ綱に縒りをかけていきます。

今回御田町で打った大社用の曳き綱は、約90mの長さの綱の束の真ん中あたりでへびぐちを作り、へびぐちから延びる綱の束の両端を縒り合せて綱を打ちました。
縄の束は3つに分けられ、そのひとつひとつに地区の人が端まで均等に付きます。
そしてクルマから伝えられる縒りを逃がしながらゆっくり束を回していきます。

このまわしている作業中も綱の束がよじれたりたわんだり、切れた縄がないか注意を払います。

素晴らしい仕上がり!
ずっしりとして、まるで龍の背のようにきりりとした出来栄えです。
うん!いい綱だ!

出来上がった綱は、蛇がとぐろを巻くような形に積み上げられて山出しまたは里曳きまで、協賛企業の玄関や店舗に飾られます。
ここはもう、見栄えが命!

へびぐちを作った方と反対側の端は、飾り用の房が作られます。
御田町を含む第2区ではこんなマニュアルが伝わっていました。

ここで一番難しいのは、マニュアル右上部の「三つたたみ」
せっかく縒った綱がほどけないようにきっちりと編んで、別の稲わらで結び目を上手に覆います。

ううむ、4人がかりの作業です。
「こんなんいっくらマニュアル見たってダメさ。まずはやってみねえとおぼえねえ」
と、役員さん。
若い衆に一生懸命教えています。
誰の顔も真剣そのもの。

飾り房はこんな風に整えられていました。(注:この画像は小宮用の綱のものなので細目に。)


キレイに整えられた綱は、ひとつは菱友醸造さん、もうひとつは信金御田町支店さんへ。

まちの人の思いが詰まった綱。
諏訪地域のあちこちで大小見ることができます。
飾り方も地区さまざま。

そのまちの個性がのぞく綱をじっくりとご覧くださいな。 (か)

 

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