旧立場川橋梁 (富士見町)

2020.06.04 / 地域を知る / 編集部さん

富士見駅⇔信濃境駅の間、八ヶ岳の方向に見える橋…
気づいている方もたくさんおられるでしょう。
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あの橋はどこからきてどこへ行くんだろう。
どこに行けばあの橋を渡れるんだろう。

と、地図をめくれば…なんと。
かつての中央東線。
今は通ることのない線路です。

昭和55(1980)年、複線化により廃線となった線路です。
この橋梁は諏訪に鉄道が延びはじめた明治37(1904)年、開通した諏訪地域でも古い区間の一部です。
岡谷の製糸会社たちが生糸の輸送のために工事を急がせ、諏訪中の未来と期待を一身に背負った鉄道開通の難所でもありました。

工事は大変な苦労がありました。
今のように重機もなく、人力が頼みです。
橋梁を支える土台(橋台)には地元の石がたくさん使われました。
古地図に記される巨石や大石まで使ってしまったのではないかと言われています。

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長さ(橋長)は約110m、「ボルチモアトラス橋」という形式で、当時国鉄の鉄道工事によく使われたアメリカンブリッジ社製のトラスを使っています。
この形式の橋は、中央線ではここにしか残っていない、貴重な橋です。

もっと近づいてみましょう。
富士見駅側にある管理道から歩いて上がることができます。
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真夏になると草に覆われて歩くのが難しくなるかもしれません。
枕木の残る線路の跡を、踏み跡をたどりながら橋梁のたもとに向かいます。

橋梁上に入ることはできませんが隙間から見学することはできます。
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(ひー、高いとこニガテだよう…)
※足元にご注意ください。転落の危険性が高い個所があります。

旧立場川橋梁は(1983)年に、当時の国鉄から付近のトンネルと共に富士見町に譲渡されました。
老朽化に伴い傷みが進み、ボルトの外れる恐れがあるなどして、町が手を入れています。
富士見町の試算によると、解体撤去には2000万円、文化財として保存をするには2~3億円とされ、住民負担の大きさに今後の処遇の決定はいまだ見送られているようです。

なにかいい方法はないのかなあ…。

と、とぼとぼ戻りかけ…
「そういえば、この線路跡はどこまで歩けるのかしら」と、富士見駅側におそるおそる…

ぎゃー!でたああああ!

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うをう、なんかジブリっぽいじゃないの。
廃線のトンネル(瀬沢隧道)がまだしっかりと残っていました。
トンネル内は水路になっているようです。
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(下リラレソウダケド…デモコワイ…)
しっかりレンガでアーチが組まれ、隙間のない石造りのトンネル。
ここを見るだけでも、土木技術の高さ(しかも徒手で!)がうかがえます。

そういえば、この旧立場川橋梁。
宮崎駿監督のアニメーション「風立ちぬ」で背景として登場したことがあるようです。
監督は富士見町に別荘を持ち、「風立ちぬ」も富士見高原病院がモデルとなった作品でしたね。

趣ある旧立場川橋梁、そのに担ってきた役割と共に、長くここにあることを願います。
ああ、ホント、なんかいい方法ないかなあ…
(ふり)

駐車場はありません。
周辺は水田も多くあります。農作業の妨げにならないようにご配慮をおねがいいたします。

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