山麓の狼を尋ねて 其の壱(富士見町)

2020.05.30 / 地域を知る / 編集部さん

ふとしたことで、手に入れた「富士見公民館報4月号」
特集がニホンオオカミでした。

町内の乙事地区でみつかったオオカミ捕獲のための落とし穴「狼落とし(いぬおとし)」が、昨年、町の指定文化材になったこともあり、企画されたようです。

あ、おやつのパンは富士見の「かまねこ庵」さん。
道の駅信州蔦木宿で購入できます。みっしり系のパンです。

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サテ。
1905(明治38)年の捕獲を最後に、日本国内では姿を消したニホンオオカミ。
現在は絶滅種となっています。

国内外に何点か「剥製」が残されているものの、復元された形はまちまち。
保存状態にもばらつきが大きく、実際どんな姿をしていたかはよくわかっていません。
学術研究が進む前に絶滅したため、生態も不明。
「ヤマイヌ」と表現されたり、「ヤマイヌ」がニホンオオカミとは別種を指しているとされることもあり、謎だらけの生物です。

人畜を襲い(狂犬病の蔓延との説もありますが)ヒトに怖れられる一方で、「三峰神社」に代表されるように神使として信仰の対象にもなりました。
魔除けや夜泣き封じとして、ニホンオオカミの頭骨は祈祷に用いられたり、「山神様のお使い」として盗賊や災難除けとして祀られるようになりました。

富士見公民館報を片手に、紹介されていたオオカミを捕まえるための落とし穴「狼落とし」を探してみましたが、どうやら財産区の森の中。
やたらと入るわけにもいかず、今回は断念。
もう一つ紹介されていた乙事地区の「次郎兵衛狼合戦」のあった場所を訪れてみることにしました。

「次郎兵衛狼合戦」は1779(寛政11年)に実際あったと乙事地区で伝えられているお話です。
草刈りに出かける途中の次郎兵衛たちは、村人から「(同じ村の)吉右衛門が向こうで狼に襲われている」と聞きつけ、救出に向かいます。
石を投げつけ狼を追い払おうとする次郎兵衛に、狼は逆上し、格闘戦になりました。
次郎兵衛は左目下から耳まで食いちぎられながらも応戦。
とうとう右腕を狼の口に突っ込み、ねじ伏せました。
そこへ次郎兵衛の兄が駆け付け、狼を打ちのめし次郎兵衛を救助。
吉右衛門は残念ながら亡くなってしまいましたが、次郎兵衛は狼退治の褒賞で高島藩の家老・茅野氏の屋敷に呼ばれ、藩から米とお金を賜り、そして帯刀を許されたということです。

その戦いの現場には、今もほこらがあります。
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その場所はなんと奇遇なことに「陣場」と呼ばれる、徳川氏と北条氏が天正10年に一触即発にらみ合い、諏訪が徳川方に付くきっかけともなった場所でした。
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供養の石祠にはなにも記されていませんが、狼とひとの戦いをきざんだ証のひとつです。
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周辺は今ものびのびと畑が広がります。
かつてはもっと樹木も少なくも見通しが良かったことでしょう。

実はこの春、富士見町高原のミュージアム(図書館併設)ではニホンオオカミにまつわる企画展がある予定でしたが、コロナウイルス感染症対策のため、延期になっています。
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展示は人と狼と自然が折り合いをつけて暮らしていく様を垣間見られるものと思います。
開催の暁には、ぜひ足をお運びください。
(ふり)

 

 

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