『後山分校が残したもの』 (諏訪市)

2019.06.02 / 地域を知る / 編集部さん

2018年、ひとつの廃校舎がとうとう解体されました。

1848(昭和23)年、戦後の混乱期の只中、茅葺の校舎からモダンなコロニアル建築の木造校舎へ新築。
設計施工とも地元の方が、そして建設にあたっては資材調達や工事作業などできる限りのことに村の人が携わりました。
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山中の小さな村は交通の便も悪く決して豊かな村ともいえない中、子供たちに最善の教育環境を整えたいとの熱い思いを感じずにはいられません。

しかし、年月がたち、やがて村人の数も減り子供たちの姿も減り、1968(昭和43)年とうとう村の子供たちは山を越えた小学校へスクールバスで通うことになり、学校は閉校。
合宿所や集会所、そして映画のロケ地などに活用されました。
建物も老朽化が進み、不法侵入や損壊の被害も目立ち始め、解体の決定が諏訪市により行われました。

それに先立ち、調査が行われました。
調査は建物の外観・構造だけでなく、建設の経緯やここで育ったかつての子供たちからの聞き取りも併せて行われ、この度報告書として刊行されました。
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昨年発足したばかりの大昔調査会と長野県建築士会諏訪支部の共同作業にて発刊。
建設当時の図面や現地の写真も豊富に掲載されています。
ひとつの廃校に対してここまで子細に記録をつづったものは他に少ないのではないでしょうか。

残念ながら建物はほとんどの場合、いずれなくなってしまうものです。
しかし、このような形で建物の姿と共に人々の姿や思いも残すことができました。
これは非常に意義のある、歴史的なことであると思います。

500部限定の発行で、本体価格1,600円。
諏訪市博物館内の「大昔情報センター」、または諏訪地域の書店で販売中です。
通信販売は諏訪書店で取り扱っています。

どうぞお早めに!
(ふり)

 

過去にも紹介いたしましたが、後山分校がロケに使われたプロモーションビデオ。
今や貴重な映像になってしまいました。

宮坂醸造 真澄スパークリングPV「with everyone」

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