特定非営利活動法人ふじみ子育てネットワーク代表 松下妙子さんインタビュー【前編】

2017.05.29 / 人・団体・インタビュー / 編集部さん

昨今増加している「子育て世代の移住」。

蓼科・八ヶ岳エリアにも、より良い子育て環境を求めての移住が増えてきています。

今回は長野県諏訪郡富士見町で、「子育てひろばAiAi」をはじめ、「野外保育 森のいえ”ぽっち”」、小学生のための「あそびば」等、幅広い子育て支援を行なっている「特定非営利活動法人ふじみ子育てネットワーク(以下「ふじみ子育てネットワーク」)」の代表、松下妙子さんにインタビューさせていただきました。立ち上げの経緯や、子育て世代と地域との関わり、自然の中で子どもが育つことの意味など、じっくりお話を伺いました。

 

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当事者から始まった子育て支援

 ー松下さんはもともと保育のお仕事をされていたんですか?

 

私はもともとは音楽系で、富士見町に来る前は大阪の楽器会社で働いていました。そこで出会った人と結婚したのですが、夫が富士見高原でペンションを経営するのが夢で。結婚と同時に二人で退職し、富士見町に移住して2年間はペンションを経営していたんです。

借りていた物件の条件が合わなくなって辞め、その後子どもができ、いろんな出会いがあって今に至る、という感じですね(笑)。

 

 ー今に至る、までの経緯を詳しくお願いします。

 

楽器会社にいる時、管理部門で働いていたのですが、週一回は音楽教室でレッスンもしていたんです。それで、自分の子どもが生まれて、保育士の経験があるママ友と一緒に音楽遊びのサークルを始めたんですね。やっているうちに口コミで新しい人がどんどん入ってきて、その中に「富士見町でも子育てひろばを始めたい」というお母さんがいたんです。

彼女が、後に「ふじみ子育てネットワーク」の最初の代表になるんですけど、「この音楽遊びサークルでやっていることは、まさに子育て支援だから一緒に勉強しよう」と誘ってくれて。他にもう一人お友達を誘って長野県が主催する子育て支援者指導講習を受けたのをきっかけに、任意団体として「ふじみ子育てネットワーク」を立ち上げました。

 

 ー現在はNPO法人として、未就園児から小学生まで幅広く子育て支援事業をされていますよね。どのように活動を広げていったのですか?

 

まずは、未就園児とお母さんのための「子育てひろば AiAi」を作るところから始まりました。

富士見町に相談したところ、当時の教育長さんがご尽力くださって、場所を借りることができました。資金は国の助成金を申請し確保しました。その後、より公共性の高い活動にするためにNPO法人化し、2008年からは富士見町の委託を受けて運営しています。

そんな訳で、無事に子育てひろばを作ることができたのですが、子育て支援って未就園児だけで終わっちゃいけないよね、という話になって。運営側もみんな子育てをしていて、子どもが保育園や小学校に行くようになっても悩みは尽きない。育ちの段階ごとに必要な支援体制をつくっていこうと、小学生のための「あそびば」、「野外保育 森のいえ”ぽっち”」と事業を増やしていきました。

 

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 ーみなさん子育ての当事者だからこそ、活動を広げることに繋がったんですね。

 

今も、スタッフはほとんどが子育て中です。当事者の目線でつくっていけるので、お母さんにとって居心地の良い場所にしやすいと思いますね。

世代があまりにも離れていると、子育ての事情もちょっと違ってきたりするので・・・。

 

 

地域と子育て世代との架け橋に。

 

 ー設立主旨に『親が主体となって行なう子育てを、地域社会が支える』とありましたが、具体的にはどのような支援になるのでしょうか。

 

まずは、子育てひろば自体が様々な人が集まるコミュニティーなので、家で子育てしているお母さんもここに来ることによって地域の繋がりを得ることができます。

次に、子育て世代以外の地域住民への発信です。なぜ子育て支援が必要なのか、今の子育てはこういう事情があるんだ、ってことを発信しています。

「私たちは支援なんかなくても、一人で頑張ってきた」っていう、上の世代からの辛口な意見もあるんですね。でも、昔と今とでは、お母さんたちの孤立感がまるで違う。昔よりも便利になった反面、悩みも増えました。コンビニの食べ物を食べさせていいのか、スマホを触らせていいのか、とか。様々な価値観や膨大な情報の中から、自分で選び取って行くだけで、もう大変なことです。今のお母さんはいいよね、ということでもないんです。

 

 

 ー否定的な意見があるということに驚きました。

 

一部分だけを切り取ると、今の子育てを批判する人の気持ちもわかります。例えば、小学生が集まっているのにそれぞれがゲームをしているとか、小さい子どもがそばにいるのに親がスマホをいじっているとか。

でも、その場に身を投じてみると、そうならざるを得ない状況があったりするので、個人を悪者にしても解決しないことが見えてきます。そこを理解した上で、良くないことは良くないと気づいてもらえるよう、親たちに向けても発信しています。子どもにとっても親にとってもより良い子育てにするためにどうしたら良いか、一緒に考えようと声をかけています。

 

 

 ー今後の展望をお願いします。

 

地域住民が現代の子育て事情や支援の必要性を理解していかないと、親たちは地域の中から孤立してしまいます。

一人のお母さんの言葉では聞き入れられないことも、私たちが団体として発信することで伝わることもあります。行政も子育て支援の必要性を発信していて、民生児童委員さんも関わってくれるようになってきたので、少しずつですが地域の理解も進んでいると感じています。

地域住民には、子育てを応援しようという気持ちを、親たちには、自分たちの子育てをより良くしていこう、という気持ちを持ってもらえるように、お互いに信頼できる関係性を作っていきたいですね。

 

後編では「野外保育 森のいえ”ぽっち”」について伺いたいと思います。

 

【団体概要】

特定非営利活動法人ふじみ子育てネットワーク

代表 松下妙子さん

所在地
〒 399-0213
長野県諏訪郡富士見町乙事1230番地研修センター
TEL 0266-62-5505

ホームページ

 

writer:及川

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