綱打ち (諏訪市)

2015.12.15 / 地域を知る / 編集部さん

来年、諏訪は御柱祭に沸き立ちます。
諏訪の人の精神に、きっと知らず知らずに刻み込まれるこの熱狂のプレリュードは既に鳴り響いているのです。

既に諏訪大社4社に建てられる御柱は伐採が済み(上社に関しては異例のことではありますが)、
祭りへの準備は着々と進んでいます。

この日、上諏訪地区では下社御柱祭に使う綱を作る「綱打ち」が行われました。
私が会場を訪れたとき、ちょうど里曳きで使う予定の「元綱(もとづな)」のうちの「男綱(おづな)」を作るところでした。
元綱(もとづな)というのは御柱に直接取り付ける、曳き綱の中でも非常に重要な綱です。
この元綱は2本とりつけられ、それぞれ「男綱」「女綱(めづな)」の名前がついています。

78本の縄の束を3本、それぞれを縒る作業からスタートします。
「車」と呼ばれるハンドルのような金属の輪に取り付けられた3本の縄の束は、
元綱長と山造衆の指示のもと、縒りをかけられていきます。
もちろん、たくさんの氏子衆が息を合わせて縒りをかける作業に加わります。

この最初の作業が肝心で、ここでしっかり縒らないと、御柱を安全に曳くことのできる良い綱はできません。
氏子衆が命を預ける大事な綱。

硬く縒られているかどうか、チェックも入念に行われます。


3本がしっかり縒られたことが確認できると、いよいよこの3本をさらに縒りあわせて、「男綱」に仕立てます。
3つの綱の束を取り付けた「大車輪」が、ぐるんぐるんと回転!
そのスピード、「ヨイサ!ヨイサ!」の掛け声、鳴く木遣り衆!

もうすでに祭りは始まっている!
諏訪生まれ&諏訪育ちのワタシ。
やはり体の芯がズンと熱くなります。

「おーい、“オトコ”つくるぞー!」の掛け声。


“オトコ”ってなんですか?

と、近くにいた氏子衆にきいて見ると
・男綱は綱にカリを一つ作るのか決まり。
・“山の神”とも言うよ。
・3つの 綱の束のうち一つを使って綱を一周まわして作る

と教えてくれました。

ふーん…“カリ”…ねぇ…。(おにーさん、さらりと言ったねえ…。)

縒っている途中の束の縒りを固定したまま、大勢の氏子衆が綱を支えて、綱の輪の中を通します。

人垣だらけで見えな…い!けど、何か結び目のようなものを作ろうとしていることがわかります。

この結び目が、“オトコ”とか“カリ”とか“山の神”とか呼ばれてる「男綱」最大の特徴。


あー!なるほど!
実に諏訪らしい、御柱祭らしい!
豊穣と繁栄を祈る縄文土器の紋様を引き継ぐようなこのスタイル!

このように綱を打つのがいったいいつからのスタイルなのか、調べが済んでいませんが、
諏訪の大自然と寄り添い暮らしてきた昔の人々の祈りをうつしだすような慣例。
現代にも受け継がれている祈りのカタチがここにもあることに、ドキドキします。

私が見た「男綱」は諏訪市内にある宮坂醸造さんのショップ「セラ真澄」に、5月の里曳き直前まで展示されています 。
「男綱」に表わされた、私たちのご先祖の祈りのカタチ。
ぜひ間近でご覧になってみてください。(か)

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