甲賀三郎伝説が残る山、蓼科山の秘密に迫る

2011.08.11 / 地域を知る / 編集部さん

その昔、近江(滋賀)の甲賀の里に鹿などを狩猟して生計を立てている甲賀太郎、次郎、三郎という兄弟があった。

ある日、兄弟が若狭(若狭湾沿岸)の国の高懸山(未確認)で猟をしていると、山の神が変じた大蛇と出会う。太郎と次郎は逃げてしまうが、三郎は逃げることなく大蛇を殺す。2人の兄はこの所業が狩りの妨げになることを怖れて、三郎を深い穴(人穴)へ突き落した。三郎が落とされた穴は、地底の異郷、維縵国(いまんこく、ゆいまんこく)に繋がっていた。三郎はその地下の隠れ里を出口を求めてさまよい歩く。ようやく信濃(長野)の国より地上に出ることができた三郎だが、その身体は蛇の姿に変わってしまっていた。故郷へ戻り、妻子が三郎の供養のために建てた観音堂の縁の下に籠もって、念仏を唱えると、身体は元に戻る。兄2人は三郎の復讐を怖れて自害し、三郎は所領を安堵され、その後諏訪の神になったという。

他に、地底にいる妻を捜すもの、妻が龍になり諏訪湖の底で待っており、三郎も龍になり諏訪湖に入るもの、などの変種がある。維縵国は、天地の果てにあるゆったりとした国の意味で、中国起源の伝説。ただし、出雲系神話の地下の国、根の国(黄泉)が融合している。『古事記』や『日本書紀』を見る限り、根の国(黄泉)は出雲にあるように見受けられるが、熊野信仰においては、紀の国(紀伊半島)にも黄泉の国への入り口があるとされている。三郎が必ず東へ移動するとされていることも興味深い。

『神道集』では、人穴は蓼科山にあったとされ、穴から出た甲賀三郎は諏訪大社の諏訪大明神として上社に鎮座し、その妻春日姫は下社に座したと書かれている。

 

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